平成22年度の「つばさ会/JAAGA訪米団」は、津曲義光JAAGA会長を団長として、永岩JAAGA副理事長、堀理事と筆者の計4名で9月6日から17日までの間、ワシントンDCでのAFA年次総会への参加に併せて太平洋軍、太平洋空軍司令部、13空軍(以上ホノルル)、宇宙空軍司令部、第50宇宙空軍、空軍士官学校(以上コロラドスプリングス)、および国防省関係(ワシントンD.C.)を訪問した。
 この間、多くの現役高官とともに、退役されたJAAGA名誉会員との交流を通じ日米相互の親善と更なる友情を深めるとともに、米軍等の現況および趨勢を把握することができた。
 最初の訪問地ハワイでは、日本勤務の経験が永く、つばさ会/JAAGAの活動に理解の深い太平洋空軍司令官ノース大将のはからいで、第13空軍司令官カーライル大将の手厚い接遇や太平洋空軍司令部運用計画部長ケルツ准将の専従のエスコートなど、温かなもてなしを受けた。PACOM、PACAF、第13空軍等を訪問し、その任務や現況、今後の方向性などについてブリーフィングを受けるとともにこれらに先立っての司令官表敬では率直かつ忌憚のない意見交換をすることが出来た。これらを通じ、長年に亘って築き上げてきた日米の空軍レベルの信頼がいかに強いものであるかを確認するとともに、さらに一層の強化・発展がなされつつあることを確認できた。
 意見交換では、西太平洋地域の現況、日米の防衛力整備の状況、共同訓練や情報交換を通じて築き上げている絆の一層の深まり、そして何より相互が「グレートパートナー」と認識し合っていることなどが話題となった。特にノース大将は日米間の相互運用性のさらなる強化を図ることの大切さを強調していた。
 また、連絡幹部の北村2佐、上垣2佐の積極的かつ綿密な事前調整や滞在間のきめ細かなエスコートなど献身的なご支援を頂いた。
 コロラドスプリングスでは宇宙空軍及びその隷下部隊、空軍士官学校を訪問。宇宙空軍では、司令官ケーラー大将を表敬。次いでコマンドブリーフィングでは作戦室で各部長も参加したMRのような形態により、新たな国家宇宙ポリシーのもと運用されている宇宙空軍の役割や主要な課題などについて丁寧に説明を受けた。質疑では司令官自ら率直に対応して頂いた。
 宇宙空軍は将来の戦いにおける新たな二つの領域、宇宙とサイバーの双方に責任を持っていること、航空も含めた三つの領域の調和と統合が重要であること、そして任務を行うに当って今後は国際協力の強化が重要になること、さらにそのための人材養成が肝要であることなどをケーラー大将は強調していた。軍の装備品の多くの分野で深く宇宙関連機能が入り込み、あらゆる作戦を宇宙が支援していることや、平素から民間分野をも積極的に支援しており、宇宙空軍の重要性は今後一層高まるであろうことから、今回この部隊を訪れ、絆を深めたことは大きな意義があったと確信する。
 また、宇宙空軍では、同じコロラドスプリングスにあるシュリーバー空軍基地も訪れ、宇宙職域の要員養成や宇宙関連装備品の改善を行うSIDC(Space Innovation and Development Center)、宇宙機能を実際に運用している第50宇宙空軍、その隷下部隊でGPSや衛星通信を24時間体制で管理・運用している部隊を訪問し、その状況を視察した。視察に当ってカメラや携帯電話はもちろん電子辞書のような電子機器まで持込が禁止されるなど厳しい保全態勢の中で、丁寧な説明を受けることが出来た。このような宇宙関連地上システムは今後わが国が宇宙機能を導入していく際に一つのモデルとなるものであり、航空自衛隊も連係が必要となる部隊である。
 一方、澄み切った青空と爽やかな空気のもと広大なキャンパスを有する空軍士官学校では、学校長ゴウルド中将以下の温かな歓迎を受けた。昼食時、4000名余の学生が一堂に会する食堂では、当日の訪問者として紹介されて全学生からの歓迎を受け、防衛大から短期留学できている2名の学生を始め、日本語を選択している学生達と会食、その後、一年生の日本語授業風景を参観して懇談する機会も得た。日本語教育の教官には航空自衛隊CS修了者がおり、自信を持って学生を教育している様子を参観し、日米空軍間の人材交流の成果を見ることが出来た。また人工衛星を独自に設計、打上げている教室の状況、学校の概況ブリーフィング、教育部長や学生部長達との懇談など盛りだくさんに準備してくれた計画をこなした。ゴウルド中将からも日米の士官候補生の相互短期留学や日本の交換連絡幹部の派遣によって日米空軍が相互理解を深めるとともに良い成果を挙げているとの説明を受けた。交換連絡幹部阿部3佐にはデンバー−コロラド間約1時間半に亘る送迎を始め、士官学校訪問の準備や調整を始め現地での各種支援など広範な分野で支援を頂きこの地域での研修が実り多いものにできた原動力であった。
 ワシントンでは米空軍協会(AFA)年次総会への参加、ペンタゴン各部署への訪問、そしてJAAGA名誉会員である歴代5空軍司令官との交流を実施した。
 退役、現役軍人などを中心として約12.5万人の会員を有するAFAは、軍事産業とも一体となって空軍の活動を支援し、国民への広報や教育を行うことを目的とした全米各地に支部を有する全国家的組織であり、機関雑誌「Air Force Magazine」などを通じて我々にもなじみが深い。今年の年次総会は昨年に引き続いてワシントン郊外の会議センターで、将軍から下士官に至る退役・現役軍人、政府関係者、軍事産業関係者など3日間約6000人が参加して催された。幅広いテーマについて、現役の指揮官、退役の経験者、有識者などが講師に招かれ活発かつ率直な意見交換がなされていた。併せて広大な展示ホールで軍事産業界がシミュレータや精巧なモデルを持ち込み最新の航空宇宙関連技術を展示しており、世界に君臨するエアパワーの根源と将来を垣間見ることが出来た。途中、AFAのダン会長を表敬・懇談したが、三沢勤務の経験もある会長から歓待を受け、米空軍60周年記念としてアーリントン墓地に隣接する高台に空軍メモリアルをAFAが寄付によって建設したことなど最近のAFAの活発な活動状況を伺う事が出来た。
 ペンタゴンでは、空軍省東アジア太平洋担当シーファー国防次官補代理、統参本部J5アジア担当副部長ニューエル准将(元横田基地司令)、空軍参謀本部A3/A5担当部長ブリードラブ中将、A2X担当部長ポス中将を訪問し、米国のアジア政策、米空軍の現状、運用構想などの話を伺うとともに、アジア太平洋地域の最近の軍事情勢等について説明を受け、意見交換を行った。
 それぞれの方々が異口同音に、日米間の絆が堅固であること、最近の東アジア情勢が厳しいこと、今後とも関係国が一層協力し合う必要があることなどを強調していた。
 さらに日本大使館に藤崎大使を訪問し、忙しいスケジュールの中、時間を割いて温かく迎えてもらい懇談する機会を頂いた。
 ワシントンでは毎年、元第5空軍司令官経験者の方々により温かく訪問団を接遇して頂いているが、特に今年は5月に「在日米軍同窓会」が設立され、日米間の堅固な同盟パートナーシップ維持のための基盤として草の根レベルの交流を一層促進させる大きなマイルストーンの年であり、恒例となった夕食会にもマイヤーズ元統参本部議長夫妻を始め、フロリダからホール中将、テキサスからヘスター大将夫妻、ノースキャロライナからワスコー大将夫妻、そしてワシントンに在住のエバハート大将夫妻、ライト中将夫妻と、JAAGA名誉会員のほとんど皆さんが駆けつけてくれ旧交を温めとてもなごやかなひとときを過ごした。特にエバハート大将ご夫妻には訪問団の受入準備や名誉会員の皆さんへの連絡調整などに尽力されるとともに、皆さんをご自宅のホームカクテルに招いて頂き一方ならぬお世話を頂いた。
 今回の訪米の総合的な調整と、ワシントン滞在間の公私に亘るあらゆる支援に関して、在米大使館航空防衛駐在官尾崎1佐と斉藤2佐に多大なご尽力を頂いた。本訪米を順調にこなすことができたのもお二人の綿密な調整と支援のお陰であった。
 今年は日米同盟50周年の節目に当る年であるが、両国間の間には普天間問題を始め懸案が多い現状である。しかし、米空軍現役・OBの間では、日米同盟の重要性がしっかり認識され具現されており、これまで諸先輩方が築いてこられた日米空軍レベルの絆の強さを再確認するとともに、さらなる人脈形成の重要性及び具体的な努力の継続が必要との認識を得た10日間であった。
 終わりにあたり今次訪米に際して各方面で協力・支援していただいた関係各位に心より感謝申し上げます。ありがとうございました。 (小川理事記)


 

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