平成24年2月29日(水)15時から約2時間にわたり、グランドヒル市ヶ谷において、統合幕僚監部防衛計画部長尾上将補を講師としてJAAGA講演会が開催された。今回は「日米共同の現状と課題」と題して、主として統合運用の観点から統幕の現状及び取組みについて、その最前線にいる部長から興味深い話を聞くことができた。朝から雪が舞うあいにくの天候にもかかわらず、79名の会員が参加し、最後まで熱心に講話に耳を傾けた。講師は防大26期生で、職域は航空機整備幹部。2空団司令、防衛大学校防衛学教育群長などを勤めた後、昨年8月より現職にある。この間にハーバード大学ケネディスクール、米国国防総合大学国家戦略大学に留学し、安全保障や軍事戦略等について研究されている。
 講演は、(1)統幕発足以降の日米同盟、(2)トモダチ作戦、(3)日米同盟に関する取組み、(4)統幕の検討課題という順で進められた。
 まず、「統幕発足以降の日米同盟」については、平成18年3月統幕発足以来のわが国及び周辺におけるでき事や日米関係等に触れつつ統幕の6年間の足跡を振返り、統幕の対応や日米同盟の深化について説明した。その中で故津曲前会長からトモダチ作戦に関して在日米軍司令官へ出されたお礼状や日米共同訓練等に対する支援についても言及し、JAAGAへの感謝の言葉を述べた。
 次に、昨年3月の東北大震災において米軍が実施した「トモダチ作戦」について、その概要、成果、課題等について語った。米軍はこの作戦に約140機の航空機、15隻の艦船、16000人の要員を動員した。日米間で日米調整所を市ヶ谷、横田、仙台に設置し、中央及び現場レベルで情報の共有、運用調整に努めた。その結果困難な任務を成功裡に遂行することができた。一方課題としては、関係省庁を含む情報共有体制の整備、日米共同対処計画の更なる深化等を挙げた。
 続いて「日米同盟に関する取組み」について、今回の震災対処も踏まえ統幕としてどのような施策に取り組んでいるかを述べた。その中では、生起した事態に応じた日米間のカウンターパートの明確化、関係省庁を含めた情報共有システムの検討、日米を中核とする国際的な安全保障環境の改善等に触れた。また、沖縄からの一部の米海兵隊の移動については、クリントン国務長官の論文にもあるように本格的な対中戦略の構築、予算対策との関連を指摘した。
 最後に、統幕発足以来6年間の実績を踏まえ動的防衛力の整備に向けて、現在統幕ではどのようなことが検討されているかについて述べた。統幕は統合部隊の司令部的機能と大臣補佐機能をあわせもっており、その機能を充実するため24年度に運用副部長を新設する他、25年度以降の要求に向けて要員の増強、防衛計画や部隊訓練、運用情報、サイバー対処機能等の充実について検討している。また、南西方面への機動展開能力に関する検討も進めていることなどを話した。 約1時間に渡る講演に続き、質疑応答が行われた。聴講者からは、米国の新国防戦略から総隊司令部の横田移転等に至るまで、日頃から考えている様々な問題について広範囲にわたる質問があり、部長との間で熱心な意見交換が行われた。最後に、吉田会長から講師に対し謝辞があり、記念品が渡された。(古畑理事記)


 

 

JAAGA講演会 : 統幕防衛計画部長 尾上将補