ご紹介ありがとうございます。そして本日ご招待いただきありがとうございます。

日米安全保障同盟は日本とアメリカのみならず地域全体において非常に重要だと考えております。私にとって本日は日米安全保障同盟における重要なそして影響力のある案件についてお話できる良い機会だと考えております。私の用意しました話が終わりましたら皆様の考えを聞かせていただきそして質疑応答に移らせていただきます。ディスカッションの組み立てが出来るよう、また我々の同盟に関する課題を皆様に考えていただけるよう、いくつかの考えを述べさせていただきます。また皆様の関心のある課題についても返答できるよう時間を取りたいと思います。出来る限り対話になるよう努めますのでご遠慮なくご質問下さい。後ほどお答えいたしますので私の話の間にも質問事項をお考え下さい。

 これまでの日本そして沖縄での勤務経験は私にとって非常に勉強になりそのことを通して日本そして沖縄への感謝の気持ちが深まりました。これまでの仕事から日本人の寛大さ、受容力、価値観、仕事への倫理観そして安全保障同盟の成功への献身さに対し敬意を表しております。また私には多くの日本人の友人がおります。彼らとの友情のお陰でこの地域における日本の特別な役割について理解し評価する事が出来ました。最近日本政府内でそして日本社会において相互安全保障についてより周到に審査する必要があるという認識が高まっており、これは非常に良い傾向だと考えております。私は我々の同盟に影響のある日々の課題を対処し、継続される対話に個人的に従事しておりますので、何ヶ月そして何年か先両国が非常に難しい問題に立ち向かうである事は分かります。また両国がお互いの利益の為にこの同盟を維持し強化し、より発展させると確信しております。まずは米軍が何故日本にいるのかという基本的なことから始めさせていただきます。そして現在そして将来我々の駐留がこの地域にどのような重要性をもたらすのか私の考えを申し上げたいと思います。後ほどの皆様との日米安全保障同盟の内容、挑戦そして将来についての討論の為、日本の世界規模のテロとの戦いへの支援に関する詳細、朝鮮半島での継続される懸念など両国の最近の協力態勢がもたらす影響について査定したいと思います。そして最後に再編制について少し述べさせていただきます。皆様は再編制という言葉は米軍に関してお聞きになっているかも知れませんが余り詳しくはご存知ないかと思います。まずは日米安全保障同盟が歴史的にどのようなものだったのかと言う事から初めましょう。日米安全保障同盟は40年以上にわたりこの地域の安定の礎となっております。米軍の日本への駐留は相互保障条約に由来し、米軍は日本を防衛し、極東の平和と安全に貢献するという任務を行っているのです。半世紀以上に渡り両国の同盟関係が太平洋地域の平和と安定そして安定の要になっているとアメリカや日本のリーダー達は何度も述べています。特にこれまでどのような経過でここまで来たかを見てみますと、これは非常に成功した例だと言って良いでしょう。1960年に相互安全保障条約が締結された時は冷戦の真っ只中でした。日本への主な脅威はソヴィエトからの攻撃と考えられていました。皆様もお分かりのように脅威は無くなりました。しかし地域の安全保障環境の危険が少なくなったわけではありません。今の時代の予測できない状況のほうがより危険な可能性があります。東アジアの防衛予算は増えてきています。短い警告、または全くの警告なしで地域紛争が勃発しかねない地域的及び政治的問題が存在しています。1997年に日本の国会は新防衛ガイドライン法案を承認しました。これは1978年の日本の防衛の骨格を拡大したものです。このガイドラインは平和維持、人道支援、米軍の後方支援や情報共有の改善に焦点を合わせたものです。新ガイドラインはまた軍と軍との計画を認める為の包括的な立案メカニズムを確立しました。この画期的法案は同盟の焦点を広げ、地域の緊急時におけるパートナーの順応性のある対応能力を増しました。防衛ガイドライン法が通過して以来、在日米軍と自衛隊は東アジアにおける脅威に対する能力、いろいろなシナリオにおいて、また東アジアの安全保障への脅威に対応する能力の改善といった共同の能力を堅実に改善してきております。去年の9月ブッシュ大統領は国家安全保障戦略を発表しました。これは国家安全の保護及び世界の平和、自由、そして繁栄の為の2,3年ごとに作られる機密扱いではない要約された戦略のことです。太平洋アジ地域のことを申し上げますと国家安全保障戦略ではテロとの戦いはアジアにおけるアメリカの同盟国は地域の平和と安定の土台だけではなく新しい挑戦に対し柔軟であり、すばやく対応出来る事を証明しました。この声明は明らかに我々の日本との経験を基に述べられており、新しい挑戦に順応し地域の平和と安定を保ち促進するにおいて役立ちます。この安全保障戦略では日本が引き続き地域または世界の案件のリーダー的役割となる事を求めています。この協力体制は我々に共通する関心事、価値観、密な防衛及び外交協力を基盤にしたものです。またこの関係を維持しこの地域の平和と安全を引き続き促進する為、国家安全保障戦略の中では同盟国に対し義務を負い、この地域に軍を引き続き保持し、必要条件、技術的進歩及び戦略的環境を満たすと述べております。我々同盟の不変の戦略ゴールの一つは途切れる事のない地域の平和と安定を確保する事です。世界規模のテロへの戦いや継続する北朝鮮の懸念などの様々な問題を通して日本は国家安全構想や関心について内部における重要な討論に向け前進することが出来ました。同盟国内での戦略的対話に関する新たな強調を見る事が出来ます。我々はこれを非常に歓迎しております。強さそして活力の双方から見ましても日米安保同盟は太平洋アジア地域の安全保障の構造の中心であると考えられます。この同盟関係は今まで以上に重要であり、両国の協力関係はまた今まで以上に密な関係であります。

 ここで在日米軍の将兵についてお話させていただきます。安全保障条約の維持の為米国は5万8千の軍人を日本に駐留させています。この人数は米国が海外に派遣している国の中ではイラクを除いては一番多い数となっております。この軍人達は5千5百の国防省職員そして2万5千の日本人従業員達に支えられております。またこれに5万2千の家族を加えますと、日米安保条約に携わる人数は14万近くにもなります。これはアメリカ側だけの数です。米軍は本州、九州そして沖縄の89の施設に分散されております。在日米軍駐留費は一年間に80億ドルを超え、このうち日本政府は経費の約半分の40億ドルを負担しております。これは大きな額です。しかしこれは両国にとって重要な投資であります。非常に大きな防衛予算と比較するとこの比較的少ない投資で、 USSキティーホーク率いる海軍空母部隊や1万8千の海兵隊遠征軍、第五空軍その中にある戦闘団、空輸団や特殊作戦グループなどを日本に置くことが出来るのです。これらに加え日本政府は米国陸軍、沿岸警備隊、米陸軍に所属する兵士や特殊作戦部隊の2千人そして小規模でありますが非常に重要な沿岸警備隊の日本における連絡事務所からも強力な協力を得られるのです。太平洋軍に属す部隊及びそれ以外の部隊が日本に駐留する部隊を援護している事を心にとめておく事が重要なのです。日本の平和、繁栄、安全を継続する為のかなり大きな任務を果たしているのです。この地域の安全を保持する為また日米安全同盟を維持する為我々がこれらの部隊を重要視している事は言うまでもありません。我々は軍がよく訓練され常に即応態勢にいられるよう日々努力しております。日本との安全保障同盟は長く卓越した二国間の密な協力関係の歴史により発展したのです。冷戦時代の何十年も前我々は日本をソヴィエトから守るべく肩を並べて働きました。1950年代そして1960年代、我々は今日の同盟の支えとなる基本的な文書、同意書及び取り決めを作り上げました。そしてここ三年の間に新防衛ガイドラインを作り上げ公布する事を通して平和維持、人道支援そして地域の危機への対応を含む戦後の広い範囲での重要な任務の現行維持を可能としています。従って日米同盟は国際テロへの挑戦にすばらしい対応をしました。同盟が作られた50年前には考えもつかなかった新しい共通した敵です。そしてこの同盟は将来起こるであろう多くの挑戦にも引き続き対処していくでありましょう。

 しかし、私が将来の挑戦事項に触れる前に、現時点での挑戦事項2,3点についてお話したいと思います。特にイラクと韓国の状況についてです。皆さんがイラクで起こっている事柄を良く観察していらっしゃることは私にも明確です。私達が日本政府の支援に大変感謝していることをまず申し上げます。そして日本国民の皆さんに対してもです。皆さんの国を作り上げる為の努力に感謝しております。私達は小泉首相が再び自ら進んで私達の利益と同盟への支援を表明した世界のリーダーの中のお一人であることを喜んで申し上げたいと思います。実際、その支援は戦闘作戦が行われるかなり以前からのものでした。そして日本国民の大半がイラクでの軍事作戦に対して反対なさっていることに小泉首相は直面していたという事実があります。この事は米国には大変に重要な事でした。米国政府のリーダーに対し日本は継続して信頼できる国であるということ、特に逆境においてもそうであるということを示すことになったわけです。日本との安全保障を維持、開発し、改良していくことへの支援が毎日の職務である私にとって大変喜ぶべき事は日本が独自の意思でその支援を決定したという事実です。何故なら、日本もまたイラクへの対応は適切で正しいことだと認識したからです。イラクにおける日本の自衛隊の存在は日本が国際的な影響力の行使を喜んで遂行することへの、そして今日世界で直面している難しい問題を解決するという証となっています。これは確かに日本にとって歴史的なステップであり、日本政府から受けている支援に対しイラクの人々が大変に喜んでいるということを申し上げることを私はとても適切だと思っております。以前からの紛争で学んだことを基盤にして、戦後の復興には軍民の努力がより緊密である事が要求されることを学びました。再興へ向けてのプロセスは自然に安全性を生み出します。そして安全な環境が民主政治のプロセスを前進させる鍵となります。そしてそのことは我々全員が実現して欲しいと望んでいることなのです。この様な支援と共に日米同盟はアジア太平洋地域での平和と安全の為の支えとなり続けるであるのみならず、世界の他の地域での支えにもなると確実に申し上げることが出来ます。我々二ヶ国が協議し、協力する課題は他にも沢山存在します。北朝鮮の脅威は確かに危機をはらんだものです。日本への脅威は即座に起こり得るもので、核軍備した北朝鮮の脅威は世界中が懸念すべきものです。メディアの報道で皆様もおそらくご存知かとは思いますが、今年の9月からは我々米国海軍がミサイル防衛のネットワーク構築の為の協力の一環として北朝鮮を含めた国々からの攻撃に備え、日本海にイージス艦を配備することになっております。私はこの地域の弾道ミサイル能力を高めることを心待ちにしております。

 一方、私達両国は継続して外交政策の場でも活動を続けます。北朝鮮の非核化のための第2回6カ国協議が2月に北京で開催され、進展がありました。アメリカの目標である、プルトニウムと濃縮ウランの核計画を含む「検証可能かつ後戻りできない完全な核放棄」は北朝鮮以外の参加国が受け入れました。協議が日米の相互利益にとって進展していることをうれしく思います。6カ国協議は北朝鮮の核問題を超越し、北東アジア地域においての定期的な安全保障フォーラムに発展する可能性があります。それでも、やらなければならない仕事は山積みであります。昨年の韓国訪問の際、ブッシュ大統領は米国が北朝鮮を侵略する意思は無いと言いました。しかしながら、大統領は又、この問題に取り組むには様々な選択肢がある、そしてその中でも政治的な選択が最重要であると名言しました。我々はピョンヤンが検証可能かつ後戻りできない完全な核放棄をし、国際的な確約に沿うことができれば米国は北朝鮮と違う形での関係作りに準備ができているということを北朝鮮に理解して欲しいのです。朝鮮半島での核非拡散という目的達成の為に米国は地域の同盟国と共に北朝鮮にその危険で挑発的な行動がもたらす事への理解を得る為働いております。そのような歴史的背景と現在の懸念事項の幾つかを簡単にお話したところで、次に日米安全保障同盟に関する挑戦事項と将来の展望について個人的な意見を申し上げたいと思います。私達が共有する歴史から米国がいかに日米同盟を重要視しているかということをご説明することが出来たでしょうか。9月11日の世界同時多発テロ事件の結果、我々は歴史的そして急激な変化の時期に来ております。世界の秩序は安全と安定には程遠いのです。その不安定さは予測不可能な、世界における新しい脅威からきています。我々は絶えず警戒し予期せぬ非常事態に備えなくてはならないのです。従って日本との安全保障関係の枠組みを開発し続けながら又、変化と柔軟性を受け入れていかなければなりません。それは広くは世界においてであり、更に各国間においての合意と交流においてです。この同盟を維持、改良するイニシアティブを抱きつづけなくてはなりません。継続して不確かな未来に向かって行かなくてはなりませんし、そして又相互防衛能力と利益を開発しなくてはなりません。それは我々にとって紛争の全範囲に適切に対応できるようにしてくれるものなのです。このことは私の最後のトピックであります再編成につながります。簡単に説明させていただきます。再編成はより良い武器を生産する為の新しい技術を使用することに限られていると思っていらっしゃる方もいるようです。しかし、そのような概念は包括的ではありません。 我々は朝鮮戦争終了後の1953年に配備された冷戦後主要な軍事エレメントである海外における米軍基地の綿密な再編成を執り行っています。このイニシアティブは我が軍の前方展開を改善する為のものです。

 再編成は冷戦時代に逆行するものではなく我々の防衛構造の将来を見据えたものに改善することが目的なのです。将来において、より効果的な軍事作戦を可能にするような構造になることを願っているのです。それは私達の軍事力に、より柔軟性をもたらすもので、必要があれば各国どの場所にも迅速に展開できる強力な能力なのです。私達が心に抱いている再編成の構造は軍事作戦において他の国々と協力する能力を高めることを目標としています。皆さんが最近、聞いていらっしゃるような単独主義とは違って、米国は同盟と他の国とのパートナーシップが作戦の鍵であることを認識しているのです。我々の地球規模での防衛構造の見直しは5つの主要テーマでなされております。第一に、同盟国の役割を広げ、新しいパートナーシップを構築することです。米軍再編成を考えつつも、同盟国及び友好国にとって共通の利益を守り防衛することを米国が確約するということを皆さんにご理解頂く為にも我々は取り組んでいます。

 第2に、不安定さに対応する柔軟性を開発するということです。私達は自分達の基地がある場所で戦闘するとはもはや考えておりません。ですから、身軽で機敏な軍事力が必要です。使いやすい能力とは簡易で迅速な展開ができ、問題が紛争になるのを防ぎ、又、紛争が戦争になってしまうのを防ぎ、そして戦争になってしまった場合には勝利する為に支援できる能力です。

 第3には、地域だけのみならず地球規模に焦点を合わす事です。我々はただ単に地域だけを見ているのでは無く、地球規模での軍事力を考えているのです。世界中のどこの戦闘地域にも移動でき、又地球規模での軍事力をマネージできる能力を備えた軍事力が必要です。

 第4に、先ほど申し上げました理由により、我々の前方展開は実際に配備されている基地にて戦闘をすることはないでしょう。ですから迅速に展開することが必要になってくるのです。こういった概念から、米軍はホスト国へまたはその国を通って外に迅速に移動可能でなければなりません。その為、同盟国とパートナーとの柔軟性のある合法的なそして支援する同意を築きあげる事が重要となるのです。

 最後に、防衛政策の鍵は能力であるということを認識することです。つまり軍人の数や基地の数ではないのだということです。新しい技術、新しい政策と戦略は以前より規模の大きな軍事力を必要とした時代に比べ比較的に小さい規模でも今日必要とされている目的を果たすことができるのです。我々の同盟国や友好国とが行ってきた多くの協議の目的は、我々の軍事構造再編成にあたって、米国が我々共通の利益を保障する為に支援する能力を高めることです。それは軍人や特定地域の部隊の数を減らしたり増やしたりすることに関わらずにということです。つまり、申し上げたいことは、適切な軍、適切な安全関係、そして適切な権威と地球規模で作戦を運用できる能力を備えてこの不安定さに対処する態勢でいなくてはならいということです。最近の事件をとおしてもお分かりのように、今日世界では多くのことが起こっております。私達はこの東アジアにおいて手ごわい隣人と共に暮らしています。今日では多くの疑い難い将来の不安定要因があります、しかし準備に入る前にその不安定要因が現実のものとなることを待っているわけにはいかないのです。我々は継続して同盟関係を維持し、それを強化し、そして何年先も現実味のあるものにして行くという目標に集中していかなければなりません。日米同盟関係は地域の安全と安定にとって要であり続けます。

 皆様の貴重なお時間とご関心に感謝致します。そしてただ今から質疑応答そしてコメントを頂きたいと思います。 有難うございました。


日米安全保障同盟(2004・8・11)
読売エディトリアル・ボード